・「雪雲」
やっぱり笹川美和はすごい。毎回毎回、すべてのアルバムに心を揺さぶられる。歌一つで、ことば一つでこんなに世界を表現して、また柔らかな欠落感すら与えてくれる。その欠落感は、失恋をして漸くひとつ冷静になれた時や、好きな映画や本を見終えた後の余韻…そういった「胸にぽっかりと開いた穴」に似ているようで、悲しさと優しさが折り混じっている。例えば「雪雲」。このアルバムの中で、私はこの曲が一番好きです。
《飽きずにねぇ愛して 雪雲大地愛すように》
飽きる事なく雪が大地に降り積もるの見て、その丈くらいの愛がほしいと思う。私も豪雪地帯に住んでいますが、雪をそんなふうに見たことなんてなかった。でも言われてみれば、わかる気がする。満遍なく、冬空の雲が優しく大地に雪を降らせるように、すべて隠してしまうほどに愛してほしい。軽く触るだけの粉雪だったり、涙混じりの霙だったり、重いくらいの牡丹雪だったり。どんな雪でもどんな降り方でも良い。ただ降ってくれれば。「あなたの愛がほしい」と言ってしまえばいいのに、笹川美和はそうしないんですね。それが心地良いと感じるのかは、人それぞれでしょう。でもこんなに美しい歌、笹川美和にしか歌えません。これってすごいことです。
・「笹川美和という世界へ」
1.迷いなく2.雪雲3.氷砂糖4.蕾5.えぐり出して6.過去7.姫林檎8.朧月夜9.忘れないでいて10.影法師11.拝借12.好きな様に
オーガニックな声がアレンジの幽幻的な世界観の中で不思議な浮遊感を保っています。だから彼女の声や音楽は、yae等のように、POPSの中にヒーリングや幻想的なものが息づいた独特な効用をもたらします。その声に導かれてパーソナルな内面世界へ泳いでゆき、満たされてゆく音楽なのですね。今作ではバンド編成の音作りですが、しかしエレクトロニカに特徴的な、音に映像を喚起させる側面は楽器が変わっても健在で、5「えぐり出して」のベース音が伝わってくる楽曲など彼女の鼓動がVIVIDに伝わってきます。
一方歌詞がもつ独特の棘や視点は緊張感をつくりあげており、この点は大きな魅力です。6「過去」は内側をえぐるようなことばの皮膚感覚がみどころで、編曲と共にイメージが広がってゆきます。他方ファルセットを使い、ことばのやさしさに繊細さを施す7「姫林檎」の淡い感覚も彼女の一部なのですね。他にこのファルセットのしなやかさが音と結びつく例では11「拝借」の、加速する音の中で声が自由に泳ぐ様子も聞き逃せませんし、ファルセットでなくともラストの「好きな様に」でレースのようなセンシティヴな歌声の編まれ方はこの歌手の効用を受け取った瞬間でした。
・「「怖い」」
上記の言葉は友人に聞かせたときにもらったコメント。確かに彼女の詩はどれもが「歪んだ一途」な言葉で埋まっているのかもしれない。「こわい」「怖いほどの想い」捉えようによってはストーカーの唄だ(笑)
だが「溺れ死ぬほどの恋」を知る、歪んだ自分にはこの凸凹の断片がぴたりとあわさる。危険に儚く、散るまで足掻いて時には風に身をまかせ、ただただ愛す。一度でも失恋をした事のある人には必ず、ぴたりとはまる一曲があるはず。
死してなお、深海を漂い、海面に指す光りを海底からただ眺め、「ああ綺麗だな」と思わせてくれる。そんな詩を彼女は聞かせてくれる。
・「期待以上の出来」
前作から一年という短期間、かつ今までの笹川美和の音楽から想像できないバンドスタイル単に手抜きなんちゃうと疑ってしまってたがそんなことは全くない短期間でも曲の質は全く落ちてない バンドスタイルというのもデビューからもう数年経つ彼女の熟れた歌声を引き出させるにはシンプルでちょうど良いむしろシングルの曲(トラック1、6、8)がアレンジで浮いてしまっている印象勿論彼女の人間に対して閉鎖的で自然に対して開放的、生々しくも清潔な歌詞は健在暗い部屋で横になってただ聴くそんな楽しみを彼女は教えてくれた
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