・「Joao Gilbertoとその人気について」
「ボサ・ノヴァ」を生み出したジョアン・ジルベルトという人は、彼に惚れ込んでしまうファンを続出させるタイプのアーティストである(彼こそ、アーティストという呼称がふさわしい)。極限なまでにシンプルな編成で、水墨画のように本質を描き出してしまう非凡な才能。演奏は穏やかなようで、注意深く聴いてみると裏では狂気が渦巻いているという二面性。1日中パジャマでギターを弾いていて家から出ない、コンサートには平気で何時間も遅刻する、等という奇妙な行動でさえ、彼の「カリスマ」化に拍車をかけるようだ。そういう部分で、多少煙たがる人もいるようだが、彼の音楽そのものによく向き合ってみてほしい。彼も最初から評価されていたのではない、自分を認めてくれない周囲に失望した真摯で繊細な若者である所から出発している。 本作はそのテンションの高さから、最代表作とみなされるが、「彼女はカリオカ」や「声とギター」も比較的近い路線である。ストリングスが加わった「AMOROSO」や「ジョアン」はもっとリラックスした印象。惜しむらくは、才気あふれる軽やかさに満ちた初期録音(Odeonより3枚、編集CDが存在したが廃盤)が封印されたままという事だ。そして、その理由が本人の意向というのが、また彼らしい。。
・「ジョアンといえば、やはりこの作品!」
初めて聞いたジョアンのアルバムがこれ。
当時の私はボサノヴァ=かったるい気の抜けた音楽という先入観を抱いていたが、ジョアンの「3月の水」を聞くやすっかり彼の虜になってしまった。今思えば、何気なく聞いている限りではリラックスしているように感じるが、その実、狂気と緊張感が渦巻いている、というギャップに魅力を覚えたのかもしれない。
ともあれ、これを機に他のジョアンの作品も買いあさったが、本作以上の感動を与えてくれるものには巡り合えなかった。では何故、「3月の水」にそこまでの魅力があるのか。全編がほぼギターと歌だけというシンプルな構成だからか。はたまた、アストラッド・ジルベルトとの離婚等であまり恵まれなかった時期だからこそ、彼の心情がそのまま作品に反映されたのか。おそらく両方とも正しいのだろうが、改めて作品を聞き返すと細かなことはどうでもよくなってしまう。つまるところ、理屈ぬきで陶然とさせられてしまうこと自体が、本作が名盤であることを証明しているのかもしれない。
評価/100点中90点
・「静謐な音の風景」
ジョアンの声とギター、それにハイハットだけのシンプルな構成。
透明感と、緊張感。差し向かいでジョアンが歌ってくれているような気になる。
ジョアンがボサノバという音楽を始めたそうだが、世界中を巻き込んだブームが一段落しても結局彼以上のシンガーは現れなかったと言っていいのではないだろうか。
・「ジルベルトの最高傑作」
ヴォサノヴァを世界的音楽に育てたのは、アントニオ・カルロス・ジョビンとホアン・ジルベルト。そのジルベルトの代表作にして大ヒット作。表題曲「三月の水」「喜びのサンバ」など、CDやレコードを持っていなくとも、聴いたことがある曲ばかりだろう。甘い、少し「粘る」ようなジルベルトの歌い方は、夏に似合う。美人歌手のアストラッド・ジルベルトは、この人の奥さん(元奥さん)です。(松本敏之)
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