・「孤独な人間への慰め」
私がリストという作曲家の音楽に興味を持ったのは、このアルバムにも収められている「孤独の中の神の祝福」という曲に出会ってからである。一時期、毎日のようにこのアラウの演奏で聞いて心の慰めとしていたものである。演奏は一音一音を慈しみを持って奏しており、厳粛で宗教的敬虔ささえ感じさせる。特に中間部の温もりの後にやってくる部分の非常に深く、孤独感を感じさせる演奏はアラウしか為せないものであろう。現代においてこれほど深い演奏をする者は皆無ではなかろうか。他のピアニストの演奏でも聞いたが、この演奏ほどの感動は覚えなかった。音楽がいまや日常の娯楽と化した現代においてじっくりと音楽そのものに向かう人は少なくなってしまったように思える。しかし、この演奏はそのような類のものとして聞いてほしくはない。一人で静かな夜に耳を傾けてじっくり聞いて欲しいものである。また、他の曲も素晴らしい演奏である。
・「リストの直系弟子」
~アラウはチリ生まれながら、幼少よりその才能を現し、政府から奨学金を与えられてドイツに留学した大ピアニスト。モーツァルトからベートーヴェン、シューマン、ブラームスなどドイツ音楽を多く演奏し、その正統な後継者とも言われた。彼はリストの高弟であったマルティン・クラウゼにも師事し、リスト直系のピアニストといえる。もちろん二つのピアノ協奏~~曲の演奏もスケールに満ちた立派な演奏ではあるが、超絶技巧ということでは他のピアニストにも目覚ましい録音がある。リストではソナタのほうに、第一人者としての風格を現している。2つの演奏会用練習曲も良いが、「巡礼の年 第一年」からの「オーベルマンの谷」がリストの真情をくみ取ったような非常な名演である。~
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