・「ガンコな音」
79 年にしてはオールドウェーブな音にびっくり、いやいやこのガンコな音が TULL なのだ...といってあげたいところだが、こういう流れのコメントを評論家やファンに吐かせたいというオッサンの意図が見えるので、あえていいません。(いってるか) 一聴オールドウェーブと思わせて、じつはけっこうちゃんとそのときの音を散りばめるところがしたたかです。007 ばりのジャケットの効果のほどはかなり不明でしたが、ハードロックと受け取れば全体にポップで聴きやすい佳作です。「Dark Ages」はしかけのあるハードロックの力作。次作ほどは混迷/迎合しておらず反骨精神は健在です。
・「苦境の産物」
英国ロック界の重鎮の’79年発表の、オリジナル・アルバム12作目。 ’77年発表の「Songs from The Woods」、’78年発表の「Heavy Horses」と併せて、“トラッド3部作”と称されている通り、ハードなロック・サウンドの中に、ストリングス、アコースティック・ギター、マンドリンが彩りを添え、それをI.ANDERSONが大らかに歌い上げる、英国情緒溢れるJETHRO TULLならではの世界を構築している。 前2作と比べると、ややロック色が強く感じられるが、その割には軽い音作りで、ポップさが前面に押し出されている。 また、楽曲にもこれと言った強く印象に残るものも無く、全体的に変化の乏しい、平坦なきらいがある。 複雑で緻密なアレンジ、テクニカルな演奏は健在だが、トラディショナル・ミュージックとロックとの融合が、今ひとつ噛み合っていないような観がある。 本作制作中に、メンバーの病気、発表後の死去や、他のメンバーの相次ぐ脱退と、バンドにとって、非常に不安定な状況が作風に表れてしまったのかもしれない。 そんな中、インストゥルメンタル曲⑩が、レクイエムかのように、美しくも切なく響くのが、何とも物悲しい。
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