・「聖地からカオスへ」
『ヨシュア・トゥリー』で成層圏まで到達した熱い魂の滑空は、再びこの地上というカオスへ舞い降り、自ら火だるまとなって転げまわる道を選んだ。彼らが、長い戦いの末に極めた頂をいとも簡単に降りてしまったことのインパクトは大きく、失望を隠せなかったファンも少なくなかった。しかし彼らほど時代の中での自己の存在意義を強く意識し、その在りようそのものを商品価値として転化できたアーティストはいない。
このアルバムは、『ヨシュア・トゥリー』で獲得した、あらゆる価値観が崩壊した後の荒野にそびえる“孤高の愛”を切り裂いてしまい、その本質を鷲づかみにしようとする困難な作業の入り口であり、激しい血まみれの気迫から、息苦しくなるような圧迫感に支配されている。前人未到の新たな峰へのチャレンジは、ボノの重く突き刺さるLOVEと、エッジの内省的なギターを武器にして、とにかく走り出してしまった。
・「このアルバムほど多くの人が多くの角度から意図を見出した作品はない。」
91年当時、バンドの方向性に対する、U2のばか正直な逆説アプローチ(ダンスサウンドへの接近)は、一時誤解されていました。でも今じゃロック史において誰もがその意図を確認してますし、クラブシーンで最も流された男声アーティストはBONOだったという事実は、そのアプローチの成功を証明してくれるでしょう。むしろここまでの純粋性はROCK史に大きな足跡を残しました。エディ・ベーダーも「誤解だったってわかったよ。」とコメントしてます。
ところでシンコーミュージック発行のハンドブックサイズで「U2全曲解説」というものがあります。故ビル・グラハム氏の解説です。そこに大きな愛情裏返しの、もっのすごい厳しい目で曲たちが批評されてます。「ワイルド・ホーシズ」なんて酷いものでした!そこを批評したら、日本の歌手の曲作りなんて、批評すらされねーよと思いましたが、U2の曲作りの思想をビル氏がよく浮き彫りにしてくれたので、彼なり視線での曲の欠陥という点も、U2ファンは知ることが出来たんじゃないかと思ってます。
昔チャゲアスのASKAの書斎がテレビに映った時、CD棚の中にはっきりと、「ACHTUNG BABY」を確認しました。しかし、音楽的には何の関係もありませんな。。
・「衝撃でした」
発売前からU2の音楽が全く違うものになっているという情報が流れていたにも関わらず、実際に聴いたときにその変わり様とカッコよさに驚かされました。
いわゆる3部作の幕開けを飾るという点でも欠かすことのできないアルバムです。その上、代表的な楽曲(例えば、The Fly,Even Better Than the Real Thing:One:Until the End of the World 等々)が揃っているという点でも、オススメしたいと思います。
・「言いたい事はたくさんあるんだ」
1991年アイルランド、ダブリンとドイツ、ベルリンの複数のスタジオで録音。益々冴えまくるボーノとエッジには言いたい事が山のようにある。特にこの頃、私生活で破綻を迎えたエッジには言いたい事や声にならない声が積もり積もっている。言えない言葉を固めてギターのリフにし、彼はこのアルバムに密かに封じ込めようとしている。
エッジのギターが全作品で一番冴えまくり、泣いている。そのギターにかぶせるようなボーノのボーカルも全アルバムで一番『泣いている』。
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