・「キース・ジャレットのソロピアノの原点」
キース・ジャレットがジャズ・シーンで残した足跡の大きさについては誰もが認めざるを得ない。チャールス・ロイド、JMなどにおける新鮮な初期のプレイ。マイルスのコンボでのエレクトリックなサウンド。前期の自身のユニットによるユニークな展開。ソロピアノという分野を芸術的領域にまで高めた功績。さらにトリオによるスタンダードの新たな可能性を示した80年代以降など枚挙にいとまがない。特にソロピアノでの数々のライブ演奏は膨大なアーカイブとして20世紀音楽の金字塔を打ち立てたといってよい。そしてソロピアノの原点といえるのが、このアルバム。決して長くない演奏ながら全曲即興によるオリジナルで、彼の強いタッチとゴスペル調の親しみやすいメロディが特徴である。ケルン・コンサートばかりが取りざたされるが、完成度という点ではこのアルバムの方が高いのではないだろうか。
・「力強さ溢れるピアノソロ」
キースの長いソロピアノの歴史はこの作品から始まります。ここでのピアノの音はやや硬い感じがして、以降のキースの録音とは違う感じがします。タッチも今と比べて力強さにあふれる、ジャズ的なタッチだと私は思います。
全曲即興演奏ですが、後のコンサートのように1曲が何十分もあるわけではなく、一番長い演奏で十分を超える程度で、聴きやすい演奏になっています。演奏はやはりキース。名演ぞろいです。1曲目の「In Front」なんかは今のキースには聴かれないようなゴスペル的な明るい演奏で興味深いです。一方で2曲目の「Ritooria」のようにまさにキース、といった美しい演奏も勿論あります。
そして個人的にはキースの顔を大きくあしらったジャケットが素晴らしいと思っています。ケルン・コンサートの写真もいいですが、こちらも粋な写真でかっこいいです。ケルンやソロを聴いて感動された方、美しく、力強いソロを聴きたい方にお勧めです。
・「奇跡の始まり」
1970年頃、キースはコロンビアと契約していてコロンビア・アーティスト・マネジメント・ホールで初めての無伴奏ソロ・ピアノ・コンサートを行った。その後、グリニッジ・ヴィレッジのマーサー・アーツ・コンプレックスで同じくソロ・ピアノ・コンサートを行っている。しかし、この時の演奏が元で一方的にコロンビアはキースとの契約を打ち切ったという経緯がある。つまりコロンビアはキースのソロを認めなかったのだ。
しかしながらこの契約が打ち切られる前にECMのマンフレート・アイヒャーという男がキース宛にレコーディングの提案を手紙で送っている。アイヒャーの提案は次の3つだった。1.チック・コリア、ゲイリー・ピーコック、デイブ・ホランド(つまり2台のピアノと二台のベース)によるレコーディング。
2.ソロ・ピアノのレコーディング。3.ゲィリー・ピーコックとジャック・ディジョネットとのトリオ(!!!)。
これを受けて1971年秋のマイルスとのヨーロッパ・ツアーをぬってソロ・アルバムをやりたいとアイヒャーに伝えた。これが全ての奇跡の始まりだ。1971年11月10日オスロ。たった一回のセッションで本作は完成する。
マンフレート・アイヒャーがいなかったら今のキースもそしてジャズもどうなっていたか僕には分からない。それほど計り知れないほど彼は偉大だ。コロンビアは自身の愚かさをその後嫌と言うほど知る事になる。
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