・「月と砂漠」
このCDを買ってもう20年以上経つのか。二曲目に尽きる。ゲイリー、ジャック、キースのトリオの凄さはこの一曲だけで存分に示される。何とも喩えようもない異次元の感覚だ。うまいとかテクニックがなどと言うまい。スタンダードを主食として生きながらえてきた部族の三人が奏でる信じられない演奏だ。他に比べるものがないほどに不思議な風味を醸し出す。 このトリオのスタンダード作品は数多あれど、この一曲にとどめを刺す。
・「自然と導き出されたスタンダードのエッセンス」
このアルバムの不思議な魅力は、このアルバムと向き合ったときだけでなく、日常の中にこのアルバムが溶け込んだとき、そのセンテンスが遠くから斜めから流れてきた時に、はっとするメロを持っている点に注目した。それはキースの例のうねりが加味されたことにより、スタンダードの普遍的なラインの魅力が引き立つ瞬間があるからだろう。キースが彼の世界で曲を深く沈ませ、ある時ぐっと浮上させる瞬間があるのだが、そこに音楽の大きな引力、魔法のような恍惚感を描き出しているのだ。例えば1「ソー・テンダー」などは、バーなど人間同士が会話している行間の中にスッと入り込んで、その場に佇み誰にも気付かれぬよう静かに輝きを振りまいてゆく。それに対しカンバセーション中の人間は無意識的に気持ちよさを味わってゆくだけだ。だがそれでいい。それこそスタンダードの力だと思うから。つまりスタンダードの良さというのは、音楽が日常に溶け込む最良の柔軟性、適合性をもつ点だ。スタンダードだけが持ちうる力をトリオが咀嚼し、微分、分解する中で、そのエッセンスが相対化され、より魅力が強調されたように再構築されている。その結果の素晴らしさは、特にキースの演奏には音楽の神が憑依するからなのか、まるでキース本人を通して、音楽の神がこの曲はあなただけに鳴らせるこんな方法で聞かせてみてね、というような導きで自然と、素晴らしい演奏になっている点だ。
・「jazz!?」
スタンダード曲集第二弾。第二弾とは言ってもVol.1と同じ時にレコーディングされたもの。keithは、ソロだとジャズともクラシックとも違う感じだけど、トリオ(ピアノ、ベース、ドラム)の演奏は、ジャズっぽいです。
・「しっとりした色のジャケットもいいですね」
名は体を現わす、ではないですが、ジャケットの落ち着いた微妙な色調が、演奏の一端を表していると思います。Vol.1を、朝に聴いた時にびっくりするほど爽やかな「風」を感じたのですが、Vol.2の方は、じっくりと沈潜した空気を感じます。最後の「I fall~」、旋律をあまりいじらずに弾くピアノがじわっと沁みるんですよ。
・「現在のトリオの原型はVol.2にあり」
既に名盤としての評価が定着しているのが、キースジャレト・トリオのスタンダースVol(1)、(2)であり、特に(1)がその誉れが高い。コード進行を延々と繰り返しながら深くインプロヴィゼーションプレイに没頭していく(1)と比較すると、リリカルなバラードナンバーが多いこの(2)は、その分聴き易い構成となっている。スリルには多少欠けるかもしれないが、難解さやくどさのない分キースのメロデイとピアノの美しさをストレートに味わえる。私は(1)(2)両方を同時購入したが、(2)の方を聴くことが多い。
奇しくも同じく一日で録音されたビルエバンスのトリオ作二枚--ハウ・マイ・ハート・シングスとムーン・ビームス--とスタンダーズ(1)(2)は、曲も二曲ダブっていて、共通点が多い。しかし、キーストリオの方が緊張感やインタープレイの濃密度において、明らかにエバンストリオを凌駕している。コード反復によるインプロビゼーションの進展を半ば放棄したかに見える最近のキース・トリオの演奏形態は(1)より(2)に近いと言えるだろう。
10数年前に買った西ドイツ製のCDは音質において本日本製のものを上回っているように感じる。それと、CDカバーの色合いやデザインにおいても両者は微妙に異なっている。一体どちらがオリジナルに近いのだろうか?
・「心温む季節、ソーテンダーがいとおしい」
スゴク個人的なことで恐縮ですが、例えば年末で月末で、いい加減にしろよ、こちとら機械じゃねえんだからそんなにつめこむなよ、出来るわけねぇじゃねえかよ、とぼやきながら終電で帰る日々が続いた週末、今日もきびしいかなっていう思いがけずにサクサクと仕事が片づき、まだ宵の口にお疲れさま出来ちゃった、あれ、世間ってこんなににぎやかで店がいっぱい開いてんだー、みんな元気に働いてんだー、そういえば夜起きてるおコチャマにもしばらく合ってないってんだー、今日はちょいとオミヤでも買おうってんだー、なんて優しい気分にみたされながら、地下街の食品売場に向かうようなとき、ソーテンダーだな、間違いなく。と思うのであります。この曲があるだけでも充分なのだが、全体にVol2はvol1に比べて優しく、和み系なのは確かである。そりゃVol1ほど派手じゃないが長くつきあってみるとその味わいがわかるのだ。
・「スタンダ-ズ1、チェンジイズと3点セットでトリオの最高峰」
本作は同月録音の「スタンダ-ズ1」、「チェンジイズ」と3点セットでキース・ジャレットのトリオの最高峰を成していると思います。「スタンダーズ1」のAll the things you areや「チェンジイズ」のFlying part2を聴くと脚でリズムをとり、うなり声をどうしても上げてしまうが、本作を聴くと、うなり声を上げる衝動よりも、クカ~という深い味わいに圧倒されます。自由な即興やキースのうなり声も最高潮の他2枚と比較して、本作の特徴はなんでしょう?それは音楽の深さ、だと思います。本作はスタジオ録音であるためか、ゲイリーのベースも非常に鮮明に、またしばしばソロをとっている点も注目すべきでしょう。
この3点のスタジオ録音にはその後のライブ(バイバイブラックバードはあるが)に比べて、綿密な構築が感じられるし、バラエティにも富んだ演奏になっています。本作5曲目ではキースだけでなく、普段ステージでも物静かな感じのゲイリーまでノリに乗って、掛け声まで飛び出します。
ともかく本作を聴くべきなのは3曲めIn Love In Vainの導入。最近のキースのコンサート(たとえば1999,2002東京)で彼が好んで弾いた雰囲気の曲です。それにベースのからみがまた渋すぎる。ベースのソロもよい。6曲めはその後のコンサートたとえば"Standards Live"で聴かれるような渋いマイナー調の演奏。ベースの寂寥感あふれるプレイがグングン突き刺さるようです。
1,2,4でもベースのソロがあり、4の出だしなど荘厳で聴かせます。本作から20年、沢山の感動をキースたちは与えてくれた。そして2001年春、東京でも聴かせてくれたよりフリーな表現は「チェンジレス」、「インサイドアウト」、「オールウェイズレットミーゴー」の流れになるのでしょう。渋谷で聴いたジャックのドラムは1969-1975年頃のマイルスの頂点のような、アフリカを思わせる、原始を思わせる胎動を感じさせました。1983年に一気に全てを完成させてしまったスタンダーズは、20年の時を経て、今度は誰も到達し得なかった新たなフリーな表現を出そうとしつつある、そう思っています
・「ピアノ・トリオって良いの?」
ピアノ・トリオってリズムセクションという位だから所詮はさしみのつま、メインで聴くジャズではないなあ!そんな風に長い間、思っていたのですが・・去年の夏に買ったCD/RWで早速コピーしたのがキースのスタンダーズ2でありました。これが我がジャズ人生を大きく変えてしまったんだから分からないもんだね。
キースのサウンドは68年のサムホエア・ビフォア当たりから変わり始め、スタンダーズ1でひとつのスタイルを築きあげてるんです。そして、このスタンダーズ2こそ真の名盤といえる完成度の高さを誇っていると私は考えております。さあ聴き始めると止められない~止まらない!この切なさ、美しさ・・一気に45分11秒の時間が過ぎていきます。
ああ~生きていて良かった!ジャズが好きで良かった!名盤とは・・良い音楽とは・・それは理屈抜き、時の流れを忘れさせてくれる音楽ではないでしょうか?ワビ・サビのピアノ・ジャズ・・心からそう思えるJAZZなんであります。
・「第一集と対をなすスタンダーズの出発点」
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