・「ウナリ声が気になって楽しめない」
キース・ジャレットと言えばウナリ声なわけで、自分は、このウナリ声が気になって嫌で、あんまりキース・ジャレットのアルバムを聴いていません。このアルバムもウナリ声炸裂で、おすすめとは言えません。この酔っ払いのようなウナリ声は、たとえるなら”志村けんのバカ殿様が乱入して、横で騒いでいるような感じ”と言ったらいいでしょうか。このウナリ声を気にせず、すばらしいのなんのとレビューしている人がいるのが不思議です。ちなみに、「The Melody At Night With You」というアルバムはウナリ声もほとんど無く、センチメンタルな曲ばかりではありますが、心落ち着く名盤なので、おすすめしておきます。
・「この1曲……」
自分がこのアルバムを気に入っているのは、10分を超える長い演奏となっている最後の1曲、ゴッド・ブレス・ザ・チャイルドのおかげ。
もともとこの曲は、非常に辛気臭いブルース調の曲。歌詞も必ずしも明るいものではなく、聖書の言葉を引っ張ってきて、子供の労働の成果を搾取している親を諌める内容のもの。原曲に関しては、自分の必ずしも幸福ではなかった家庭環境に照らして、しんみりとした方向へと感情移入させてしまうのが常だった。
しかし、このアルバムのゴッド・ブレス・ザ・チャイルドは曲調も全然一新して、新鮮……。いや、新鮮なんてありきたりな言葉じゃ済まないな。透明感の高いピアノ、思わずステップを刻みたくなるノリのいいドラム、骨太で安定し、それでいて明るさを引き立たせるベース……。トリオの特徴が上手く出ていて、心を浮き立たせる曲調。各自のソロパートの音も弾けてる。特にドラムのソロは「おいおい、ロック調つーか、マーチかよ、これ(笑)」10分超の演奏時間が短く感じる。
本来は重苦しいはずのこの曲なのに、開放感に包まれ、心がすっかり鼓舞され……「何? このゴッド・ブレス・ザ・チャイルド? 全然、おもしれーじゃん。もっと聞かせろ」
お陰で、このCD、10数年にわたり、家で仕事をするときに欠かせないBGMのひとつになってしまった。
・「キースの演奏スタイルに耐性がある人向け」
ピアノはとても澄んでいて、儚さまでも感じてしまうくらいに美しい演奏だ。
しかし、だ。演奏しているキース本人の「うぃー、うぃー!」というノリから来ているうめきや叫び声まで今回のリマスターではっきりと聴こえるようになった。美しいピアノトリオ演奏に酔っ払いのような与太声が混じって聴こえるので集中して演奏に酔いしれることが出来ない。キースのピアノが大好きならそんなことは全然気にならないだろうが、キース初体験やあまり聴く枚数を経ていない方は、まずそういううめきがほとんど聴こえない「ケルン・コンサート」を聴いてから各種コンサートに手を出したあとで本作を聴いた方がいいと思います。
・「keith jarrett trio」
即興のピアニスト、keithがいまも不動のメンバーとスタンダード曲を演奏しています。自然とkeithが唸り声が聴こえて来ます。好き嫌いが別れるところですね。私は気になりません。
・「ピアノトリオの新たな基準(スタンダーズ)を確立した名盤」
ピアノトリオの甘美さや気高かさだけでなく、そこに潜む狂気や凶暴性までも、これほどまでに濃密かつ克明に表現したトリオは他にないだろう。キースは自己の幻想をどこまでもリアリスティックに追求する妥協なき芸術家だ。彼の構築する音世界は孤高ではあるが、まるで深遠な真理のように、人を惹きつける。
虚飾を徹底的に排除したパワフルでシリアスなジャズ。三人のインタープレイが創り出すとってもリアルなこの音空間を共有できることは、ジャズファンの幸せ以外何ものでもない。スタンダーズトリオがここで主張する新たなジャズの美意識に身も心も酔わされる。
トリオ結成20年後においても、キースジャレット(p)ゲーリーピーコック(b)ジャックデジョネット(ds)の三人の名声は衰えを全く知らない。本作はこのトリオのデビュー作にしてジャズ史に刻まれた永遠の名盤である。
・「処女作に全てあり」
思えば、その後数々のCDに現れたスタンダーズの魅力の全てがこの1枚に凝縮されていた・・と言ってもいい程、出来過ぎの1枚。まず選曲の妙。タイトルがスタンダーズで1曲目が「Meaning of The Blues」。これってスタンダードなの?普通スタンダードって言ったら、枯葉とか持ってくるでしょう!渋すぎます。そして、溢れる叙情性。何と深い!「It Never Entered My Mind」。意表を突く発想・・・。過激に突っ走る「All The Things」、何でロックなの?「God Bless The Child」が。そしてスイングの極み、「The Masquerade Is Over」。改めて通して聴いてみて、全ての可能性の萌芽がここにあった、という印象。曲順もこれ以外に考えられない構成、スタジオ盤でこれだけの
充実度というのは、その後ライブ中心のアルバム群の中でも貴重と思います。
星は辛口で4つ。
・「脱アメリセントリズムの雛形となった名作」
チャールス・ロイドの四重奏団およびマイルスのグループへの抜擢で彗星の如く現れ,1970年代の寵児となったキース・ジャレットは,若年の大半をオリジナル曲ないしは純然たる即興演奏に費やした。この作品は,徹底した自作自演主義を通じてジャズ言語の会得を終えた彼が,満を持して1983年に発表したもので,こののち四半世紀以上に渡って継続することになるライフ・ワーク的なプロジェクト「スタンダーズ」の出発点となった作品。いわずと知れたキース畢生の傑作である。
既に3人はピーコックのリーダー作「テイルズ・オブ・アナザー」で手合わせをしており,そこではオリジナル曲をベースに奔放な演奏を展開していた。しかし,スタンダーズ以降のキースからは,それまで用いてきた実験的な楽器編成,演奏の影が急速に薄れていく。あらゆる語法に手を染めた後に,もはや,過剰な自意識に溺れ下手な小細工を労せずとも。衒いのない歌ものを,真っ当に演奏しても。一音一音にオノレ独自の語りを自在に含ませることができるまでに成熟したことを悟ったのであろう。こうして見れば,これ以降のキースのあらゆる活動は,実のところ,全てを知った上での,確信に満ちた「独自の語り」の追求という一点において共通していることに気づかされる。
このアルバムを源に,あまりにも多くのものが派生してきた。ことに欧州のジャズ界におけるキースの存在は,マイルスやモンクら古の巨人に匹敵するものとなる。昨今大きなうねりとなって,ジャズにおける「米中心主義」を瓦解させた欧州ジャズの美意識は,他ならぬこのトリオによて先鞭をつけられたといっても過言ではない。
余談ながら,20年後の今,キースの進んだ道を踏破しようとしているのがブラッド・メルドーである。極限まで技巧と即興のスリルを追求するライヴ盤と,クールなキースに対する「ニヒルな語り口」を完成させようと目論むスタジオ録音。この2者を同時並行するメルドーは,間違いなく確信犯といえるだろう。
・「ジャズの名盤中の名盤、聴く度に新たな感動が押し寄せる、必聴!」
本作はジャズ雑誌等の評を読む限りでは何やら難しそうで、ちょっと敬遠しておりました。キース・ジャレットのCDはほとんど全部もっているというのに、本作ともうひとつStandard IIはもっていませんでした。さて、意を決して入手したCDを聴いてみると・・・何と分かりやすい、そして無駄の無い作品なのだろう。叙情をこれ以上なくクールに、ダンディに仕立て上げたIt Never Entered My Mind。All the Things You Areのリズムの応酬。God Bress the Childは初期の「My Back Pages」あるいはブレゲンツコンサートの主題を思わせるような、明るい、とびきりジャジーな解釈です。強いて難をいうと、キースが叙情的なフレーズに沈潜しているところにジャックがドスドスとドラムをたたいているところがありますが、それも聴き込むにつれて、違って聴こえて来るのかもしれません。本当はキースのCDはソロのものが一番好きなのですが、本作だけは別格だと思いました。これの凄さを汲み取るのにはまだ何度も聴き直さないといけません。聴く度に新たな感動があります。例えば、マイルスの「Kind of Blue」、キースのソロでは「The Melogy at Night with You」や「Koeln Concert」、ソニーロリンズの「Saxophone Colossus」等を凌いだとさえいえる、ジャズ界の永遠の名盤の中の名盤です。
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