・「ヨッフムと時間を共有する。」
ヨッフムの起伏の激しかった指揮者としての人生を顧みると、この曲を録音した60年代前半が、至福のときであり、音楽的にも充実していたのかもしれない。わたしは、この演奏こそヨッフムの生涯でも最上の演奏ではないかと思っている。
ブルックナーの9番と彼の相性もぴったりである。曲全体に、ウィーン的というよりは、ドイツ的な厳しさ、荘厳さ、厳格さといったものが、充満している。特に2楽章のきりっと引き締まったスケルツオは秀逸である。教会音楽家というより野人としてのブルックナーを彷彿とさせる。この時期のベルリン・フィルはカラヤンに良い意味でトレーニングされていたこともあり、ブルックナーの音楽や世界観をよく理解していることが手に取るように分かる。最近の彼らは(といってもメンバーの大半は入れ替わったが)指揮者がブルックナー抱いている思いが完全に伝わっていないように思えるのはわたしだけだろうか。同様の現象がマーラーでも生じている。
この演奏を通して、ヨッフムが作り出した音響空間を味わい時間を共有できるのは喜びである。64年録音のため若干定位の甘さとヒスが気になるが、最弱音の時のみである。ダイナミックスは最近の録音と遜色ない。
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